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フォーエバー21 クーポン編集

 私はほっと救われたように一揖《ゆう》して立上った。一座は和《なご》んでいる。他愛ないもんだ。にくければにくいで燃え立って、今度は又一斉に私への同情派へ変ったふうだ。 「ようと看病してつかわさいや」 「気をつけなっせえ」  と口々に私を送る。唯《ただ》一声、例の男がよろけながら大声を上げた。 「あんまり上もんば、揺《ゆ》り殺しちゃ、いかんばーい」  わっと哄笑が湧く。私は酔漢の好意をまぶしく受けながら、戸外に出た。海波の湿気に冷えた風が頬をなぶるのである。  翌朝あらましの常会の模様を私はリツ子の母に取りついだが、 「誰が腸ケッカクやら云うたろうか?」  母はしきりにそこのところへこだわった。まさか腸結核は省いたろうが、母はその模様をまたリツ子に伝えたふうである。朝の掃除の時にリツ子が云う。 「どんな人でした。その酔っぱらいさんは?」  話を伝えきいて感謝しているようだ。 「まんまるい赭《あか》ら顔でね、年の頃、さあ六十位かな」  昨夜の人々の話の模様から、或《あるい》は火葬場関係の者ではなかろうかと私は思ったが、リツ子に云うのはためらわれた。リツ子は何度も繰りかえし私に聞いて、好意を寄せてくれたその男の想像をたのしむふうである。病気のつれづれ、僅《わずか》に心が和んでいる様子だった。 「ああお父様」  思い当ったのか、とふりかえると、 「昨晩ね、あれから静ちゃんが見えて、桜井のあの人からお礼に味噌《みそ》を一貫匁いただきましたのよ」 「ほう、可也さんから?」
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