シャネル財布 コピ ー代引き
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null「ねえ、開けてっ! ここを開けてっ!」  後部座席にいるのは男の子と女の子だ。女の子は10歳ぐらい。男の子はそれよりいくつか下だろう。ふたりは目を閉じ、お互いの体に寄り掛かるようにしている。 「ここを開けてっ! 早く、開けてっ!」  葉子は拳《こぶし》が痛くなるほどサイドウィンドウを叩き続けた。その時、後部座席の女の子の細い手が、白いセーターに覆われたまだ膨らんでいない胸の辺りを掻《か》き毟《むし》るのが見えた。  ……生きてるっ!  女の子の小さな口が酸素を求めてパクパクと動き、細い喉《のど》がわずかに震える。 「ねえ、お願いっ! ここを開けてっ! ねえ、目を覚ましてっ!」  葉子はさらに激しく窓を叩いた。だが女の子はそれっきり、また眠り込んだかのように動かなくなってしまった。  葉子は辺りを見まわし、落ちていた拳大の石を拾い上げた。それを握り締め、助手席側の窓に叩きつけるように振り下ろした。手首に強い衝撃が走った。だが、窓ガラスは割れず、跳ね返された石が手を離れ、数m先の草むらに飛び込んだだけだった。 「誰か来てっ!」  葉子は空に向かって声の限りに叫んだ。「誰かっ! 誰か来てっ!」  もう1度辺りを見まわした。そして今度は、さっきの石よりずっと大きな、漬物石のような丸い石を見つけて抱え上げた。重たいそれを頭上に振り上げ、渾身《こんしん》の力を込めて助手席の窓ガラスに叩き下ろした。  今度はうまくいった。助手席のガラスは無数のひび割れとともに、熱に溶かされたかのようにグニャリと内側にたわんだ。葉子は石を足元に落とすと、今度はランニングシューズの靴裏でひび割れた窓を思い切り蹴《け》りつけた。1度、2度、3度……。ついにサイドウィンドウは助手席に倒れた女の骨張った背中に崩れ落ちた。  ガラス片で切れたふくら脛《はぎ》から血が流れ始めたことにも気づかず、葉子は割れたガラスの隙間に腕を差し込み、ドアロックを解除した。助手席のドアを開け、排気ガスの充満した車内に体を突っ込み、激しく咳《せ》き込みながらエンジンのスイッチを切り、ほかのすべてのロックを解除する。残りのガムテープを引きはがし、ドアを4枚とも開け放ち、後部座席から女の子の細い体を引きずり出し、続いて男の子を引きずり出す。落ち葉の上に横たわった男の子の水色のセーターの胸に耳を押し当てる。息を殺し、耳を澄ます。  男の子の胸はまだポカポカと温かい……けれど、そこからはもう何の音も聞こえなかった。もちろん呼吸もなかった。  ……死んでる。  恐怖が頬を凍らせた。だが葉子はパニックに陥ったりはしなかった。今度は男の子の脇に横たわった女の子の胸に耳を押し付けた。  ……死なないで……死なないで。